【獣医師執筆】犬の白内障とは?原因・症状・治療|生活での注意点は?
病気
2020.06.29

【獣医師執筆】犬の白内障とは?原因・症状・治療|生活での注意点は?

最近うちのワンちゃんの眼が白っぽくなってきた…それはもしかしたら白内障かもしれません。ワンちゃんに多い白内障について詳しく解説します。

この記事の執筆

獣医師 高橋 渉
2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。

http://www.iogi-animal.com/

白内障とは

白内障眼の中には、水晶体と言われるレンズの役割をする器官があります。

水晶体は、主に水とタンパク質で構成されており、

  • 水晶体嚢
  • 水晶体皮質
  • 水晶体核

の3つの部位に分けられます。水晶体は、水晶体の周囲を囲むように存在する毛様体とチン小体という器官に引っ張られ、その厚さを変えることで遠近を調節する役目があります。

本来水晶体は無色透明な器官ですが、それが白く濁って透明性が低下してしまう病気を白内障と言います。白内障と似た症状に見える病気として水晶体核硬化症があります。白内障と水晶体核硬化症の違いとしては、白内障は、水晶体のタンパク質が変化することで起こり、悪化すると様々な合併症や失明を伴います。

対して、水晶体核硬化症は、水晶体の核が加齢に伴って白く見えるようになる変化で、老齢性変化の1つであり、ワンちゃんでは視力に影響しないため治療の必要はありません。

白内障の原因となりやすいワンちゃんの特徴

白内障人の白内障の原因は、多くは加齢によるものです。しかし、ワンちゃんでは加齢以外が白内障の原因になることが多いです。白内障の原因としては、下記のものが挙げられます。

白内障の原因

  • 遺伝性
  • 先天性
  • 代謝性
  • 外傷性
  • 中毒性
  • 老齢性
  • 他の眼疾患

① 遺伝性

遺伝性でかかりやすい犬種

トイプードル、柴、アメリカンコッカースパニエル、ビーグル、ボストンテリア

白内障は、上記の犬種の場合に遺伝性で起こることもあります。遺伝性の白内障は、加齢による白内障とは異なり、比較的若い年齢で起こることが多いです。

② 先天性

先天性白内障とは、生後すぐのワンちゃんに見られる白内障で、眼が開いたときにはすでに白内障になってしまっています。

③ 代謝性

糖尿病などの身体の代謝機能の異常によって起こる白内障です。両目で急激に起こる場合があります。

④ 外傷性

痒みなどによって眼を長期間こすり続けたり爪などが刺さったりすることによって水晶体が障害されることで白内障が起こる場合があります。

⑤ 中毒性

抗真菌薬などの一部の薬の服用が原因となって水晶体が変性し、白内障を起こす場合があります。

⑥ 老齢性

小型犬の場合10歳以上の子では、加齢によっても白内障が起こります。この場合多くの場合は、進行は緩徐です。

⑦ 他の眼疾患

ぶどう膜炎や水晶体脱臼、緑内障などの別の眼の病気にかかった場合にも白内障になる場合があります。逆に白内障が原因となって、他の眼の病気が合併することもあります。

白内障の症状

白内障白内障は、初期の場合や片目のみの場合は、特に症状がない、もしくわかりづらいためご家族も気づかないことが多々あります。しかし、病気が進行して、視力に影響が出始めると下記のような症状が見られます。

白内障の症状

  • 暗いところで物にぶつかる
  • 触れようとすると過度に反応する
  • 目線が合わない
  • ご飯を置いても位置を特定できない
  • 攻撃的になる
  • 壁伝いに歩く  など

ワンちゃんは、人と比べると周囲を認知するのに視力に頼っていないため、一見すると通常通りに生活しているように見えるかもしれません。しかし、気づいたときには、すでに視力を失っている場合もあります。よく注意して上記のような症状を早めに見つけてあげましょう。

また、白内障は、進行することで下記のような他の眼の病気を合併することがあります。

白内障から合併する病気

  • 水晶体起因性ぶどう膜炎
  • 水晶体脱臼
  • 緑内障
  • 網膜剥離     など

白内障単独では、痛みを伴うことはありませんが、これらの疾患を併発するとは痛みを起こしてしまい、眼をこすったり、眼を細めたりする症状がみられます。また、痛みがひどい場合は元気、食欲が低下することもあり生活の質が著しく低下することがあので注意が必要です。

白内障の診断

白内障の有無や進行度の診断、白内障を発症した原因や合併症の有無を調べるうえでは、問診眼科検査(スリットランプ検査、視力の確認、眼圧検査、眼に対する超音波検査)、血液検査など様々な検査が必要となります。

① 問診

問診

獣医師が確認する点

  • 年齢
  • 犬種
  • ワンちゃんのご家庭での様子
  • 他に白内障の原因となりそうなことはないか

まず、獣医師がワンちゃんを診させていただく前に確認することとしては、そのワンちゃんの年齢犬種です。それによって老齢性に起きているのか、それとも他の原因で起きている可能性はないかなどを推定します。

そして、お話を伺う際に獣医師が白内障のワンちゃんの患者さんに聞きたいこととしては、ワンちゃんのご家庭での様子です。例えば、上記のように暗い所での様子や性格の変化の有無、痛そうな様子や食欲体調の変化はないかなどを伺います。

また、他に白内障の原因となりそうなことはないかを伺います。例えば、アトピーによって眼を掻いたりしていないか、白内障の原因となる薬を服用してないか、糖尿病を疑うような多飲多尿などの症状がないかなどを注意深く伺います。そして、それによって眼以外に必要な検査や治療がないかを検討します。

② 眼科検査

眼科治療眼科検査としては、まず白内障の有無進行度を診る検査とその他の合併症が起きていないかを調べる検査を行います。

白内障の有無を調べる検査としては、ペンライトを用いて直接水晶体の混濁具合を診る検査の他にスリットランプという細い光を当てて目を断層像で診ることができる機械を用いる検査を行います。この検査で、眼の濁りが白内障なのか上述の水晶体核硬化症なのかを診断します。

また、この検査を行う上では、しっかり水晶体を確認するために散瞳薬というものを使って虹彩という目の絞りの部分を開く薬を使う場合もあります。そして、この検査で大切なことが白内障の進行度です。白内障の進行度は、下記のように分けられます。

白内障の進行度のステージ分類

  • 初発期…水晶体全体のうち0~15%が白く濁った状態

  • 未熟期…水晶体全体のうち15%以上が白く濁った状態

  • 成熟期…水晶体全体が白く濁った状態。視力がほぼ失われてしまっている

  • 過熟期…水晶体の内部が液状化してしまった状態。

白内障は、その程度によって初発期、未熟期、成熟期、過熟期に分けられます。これらの進行度の分類は、次の治療を考慮するうえで重要な指標となります。

白内障がみられる場合、次に現在の視力を確認する検査を行います。例えば、その一つに綿球落下試験というものがあります。これはとても単純な検査で、ワンちゃんの視界の上からゆっくりと綿球つまりコットンを落とします。視力のあるワンちゃんでは、多くの場合上から落ちてきたその綿球を眼で追います。それを行なわない場合には、視力が弱いないし、なくなっている場合があります。

他にも威嚇瞬き反応といって片目ずつ目や瞼に触れず、風も当てない程度に物や手を眼に近づけ、眼を閉じるかを調べます。見えていない場合は、近づけても瞬きをしなくなってしまいます。また、部屋を暗くし、物を乱雑に置き、ワンちゃんがその場所で物にぶつからずに歩けるかどうかなどを見る検査などを行います。

他にも白内障によって起こるぶどう膜炎や水晶体脱臼、緑内障、網膜剥離などの合併症の有無を確認するために眼圧検査を行ったり、眼に対して超音波検査を行う場合もあります。また、ワンちゃんがたくさん水を飲んだり、たくさん尿をしたりする場合、白内障の原因に糖尿病が関わっている場合もあるため、血糖値などを血液検査で確認する場合もあります。

白内障の治療

① 外科治療

手術現在白内障を治す治療としては、外科手術のみとなります。外科手術の方法の1つとしては、超音波乳化吸引があります。この方法は、全身麻酔をかけたうえで、特殊な器具を用いて、白く濁ってしまった水晶体の中を破壊して、吸引する方法です。そして、同時にその中を吸引した水晶体に人工のレンズを入れることで元のような透明な状態にする手術です。

この方法によって多くの場合、視力を回復することができると同時に白内障によって起こりうる様々な合併症の発症を抑えることができます。白内障の手術を行ううえで注意しなければいけないこととしては、全身麻酔のリスクや術後の合併症と術後点眼治療の継続などがあります。また、白内障の手術は、その白内障の進行度によっても合併症の発生率が異なり、症状が進行することでよりその発生率は高くなるため、定期的な検査によって適切な時期に手術をおこなうかの検討が必要です。

② 内科治療

犬 薬内服の薬や点眼などの内科治療によって、白内障を治すことは現在のところできません。白内障は、水晶体という密閉された器官のタンパク質が変性してしまう病気のため一度変化してしまったタンパク質を元の状態に戻すことが困難なためです。

そのため、白内障に対しての内科治療としては、白内障に起因する合併症に対しての治療が主になります。特に水晶体起因性ぶどう膜炎という合併症は、発生率が高く、痛みを起こし、他の合併症を起こすこともあるため注意が必要です。水晶体起因性ぶどう膜炎を予防、治療するためには、消炎剤やステロイドの点眼液が有効です。そのため、眼の定期的な検査を行い、その使用について検討する必要があります。

白内障の治療費

治療費

治療費…約数十万円程度

外科手術を行う場合は、大学などの二次診療施設や眼科の専門病院で行う必要があります。なぜなら、白内障の手術は、専門の器具と高度な手技を要する手術のため熟練した術者による処置が必要です。

そのため、費用も多くの場合数十万円程度と高額になります。また、術後の合併症の可能性もあるため定期的な通院によって、経過を細かく観察する必要があり、通院費についても考慮しなければなりません。手術、治療を行ううえでは、費用についても先に担当の獣医師と十分に相談を行い臨みましょう。

白内障の予防

予防現在白内障を確実に予防する方法はありません。しかし、それでも可能な限り発症を予防するための方法としていくつかをあげてみます。

① 原因を知り、それを除外する

白内障を起こす原因を知っておくことで、その中で予防ができることは予防するようにしましょう。例えば、白内障を起こす可能性のある薬を使用する場合は、可能な限り短期間で行うように注意する。アトピーなどの痒みがあるワンちゃんの場合、外傷からの白内障を予防するため、痒みをしっかりコントロールする。糖尿病などの場合は、そのコントロールをしっかり行うなどです。これらはもちろん獣医師が心して行わなければいけませんが、ご家族もそのことを知り、獣医師と協力して治療にあたりましょう。

② 抗酸化剤の使用

酸化作用とは、生物は呼吸によって酸素を取り入れていますが、その一部が変化して活性酸素となります。活性酸素は、鉄がさびるように細胞に酸化させることでダメージを与えます。結果、人では皮膚に対してシミや皺を作り、老化現象の原因となります。抗酸化作用は、この酸化作用を防ぐことで、アンチエイジング作用が期待されます。この酸化作用は、白内障の発生にも関与していると言われています。そのため、抗酸化剤含まれるサプリメントや点眼薬などは、白内障予防の効果が期待されます。

白内障のワンちゃんとの生活の上の注意点

注意白内障は、多くのワンちゃんに起こる病気です。視力が弱まったワンちゃんは、とてもデリケートになります。ご家族は、それを理解してあげなければなりません。視力の弱ったワンちゃんとの生活上の注意点としていくつかをあげてみました。

生活上の注意点

  • 急に触れたりせずに声をかけてからゆっくり触れるようにする。
  • 大きな音を立てないようにする。
  • 家の中は、物の位置をこまめに変更しないようにする。
  • 階段などの段差などは、なくすか近づけないように柵を設ける。
  • フードは、レンジなどで適温に温めて香りがたつようにする。

などを注意しましょう。

まとめ

トイプードル白内障は、多くのワンちゃんがかかる病気です。早期に発見してあげることで、外科手術によって治療することができたり、進行を遅らせたり、痛みを防いであげたりすることができます。定期的に動物病院にかかって、獣医師に目のチェックをしてもらいましょう。

 

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獣医師 高橋 渉
2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。

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