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そもそも犬の食物アレルギーって?
そもそもアレルギーは、本来ウイルスなどに反応する免疫反応が、通常であれば無害なはずの物質に過剰反応することで起こります。
この過剰反応が起こるた特定の物質のことを「アレルゲン」と呼び、アレルゲンに対して、過剰な免疫反応を獲得することを「感作」を呼びます。
食物アレルギーは、食材に含まれる分子の大きく、消化しづらいタンパク質を、アレルゲンと認識することで感作が起こってしまうのです。
食物アレルギーを起こしやすいアレルゲン一覧
犬は、どの食物でもアレルギーを発症する可能性がありますが、以下の9種類が特に発症しやすいアレルゲンだといわれています。
<アレルゲン一覧>
アレルゲン | 発症割合 |
牛肉 | 34% |
乳製品 | 17% |
鶏肉 | 15% |
小麦 | 13% |
大豆 | 6% |
ラム | 5% |
トウモロコシ | 4% |
卵 | 4% |
豚肉 | 2% |
主に、タンパク質や炭水化物でアレルギーが起こりやすいと言われており、上記以外には「魚類」や「米」などへのアレルギーが確認されています。
食物アレルギーの症状
犬がアレルギーを発症すると、以下のような症状があらわれます。
<食物アレルギーの症状>
・皮膚炎(痒み)
… 顔(眼・口の周り)、肛門周囲、わきの下、背中、手足の痒み、フケがでる
・脱毛
…全身もしくは、口の周り、耳の先端、肢などの部分脱毛
・外耳炎の併発
… 耳の痒み、耳が臭くなる、黒い耳垢が見られる、など
・消化器の不調
…下痢や嘔吐など消化器系統の不調
特に、皮膚炎を発症する犬が多く、
・いつもよりも自分の体を掻く
・しきりに体を噛んだり舐めたりする
・体を地面に擦り付ける
などの様子が見られる場合は、アレルギーを発症している可能性があります。
また、必ずしも全ての症状を発症するわけではなく、皮膚症状だけの場合や、皮膚症状がなく慢性的な下痢や嘔吐を繰り返す場合など、それぞれ症状が違うので注意が必要です。
食物アレルギーの原因とメカニズム
食物アレルギーは、
・アレルゲンの摂取
・アレルギー体質
・さまざまな環境要因
の3つが重なり合った結果、発症すると考えらています。
もちろん、直接的な原因はアレルゲンの摂取になりますが、大気汚染などの「劣悪な環境」、遺伝的な「アレルギー体質」など、複合的な要因が重なり合った結果、アレルギー症状があらわれます。
また、この3つが重なったからといって、必ずしもアレルギーが発症するわけではありません。
有名なアレルギーのメカニズムの説明に「アレルギーコップ説」というものがあります。
<アレルギーコップ説>
上記の画像のように、さまざまな要素がコップに注がれるように蓄積し、そのコップが溢れた時にアレルギーが発症するというものです。
もちろんアレルギー体質の子はコップが溢れやすいので、アレルギーが発症しやすいのです。
犬の食物アレルギーの診断方法
犬のアレルギー検査は、以下の4つのステップで行われます。
<アレルギー検査>
①除外診断
②除去食試験
③アレルゲンの検査
また、アレルギー検査は、全て行って初めて正しい診断が可能となるため、高額になりますが、基本的には全ての検査を受ける必要があります。
病院によりますが、総額約 万円程度を想定しておきましょう。
①除外診断
まずは、アレルギー以外の理由で痒みなどが出ていないかを確かめるため「除外診断」を行います。
除外診断は、
・寄生虫疾患の除外
… ノミやマダニなどの害虫がいないかをチェック
・感染性疾患の除外
… ブドウ球菌やマラセチアなどにかかっていないかのチェック
の2つが行われます。
「寄生虫疾患」のチェックは、視診や予防薬使用の有無などの問診、皮膚を引っ掻いたり、被毛を抜いて皮膚の深いところに寄生虫がいないかなどをチェックします。
「感染性疾患」のチェックは、顕微鏡を使い、皮膚にスタンプしたセロハンテープを確認し、細菌の有無を確認します。
上記の疾患が確認できない場合、アレルギーが疑われ、次の検査が行われます。
②除去食試験
除外診断が終わったら、いよいよ食物アレルギーかどうかの検査です。
低アレルゲンフードと水のみを2ヶ月間与える「除去食試験」を行います。試験終了時に痒みが出なければ、食物アレルギーと認定されます。
低アレルゲンフードは、
・今まで食べたことのない食材を使用したフード
・タンパク質の分子を小さくした特殊なフード
の2種類が存在します。
また、除去食試験を行っても痒みが残っている場合は、ハウスダストなどの環境を要因としたアレルギー(アトピー性皮膚炎)の可能性があります。
③アレルゲン検査
食物アレルギーであることが分かったら、アレルゲンを推測するための検査が行われます。
「特異的IgE抗体検査」と「リンパ球反応検査」と呼ばれる血液検査を行い、どのアレルゲンに反応を示すかを検査します(期間は1〜2週間ほど)。
費用は、検査するアレルゲンの種類によって異なりますが、約3万円程度を目処に考えておくと良いでしょう。
また、上記の血液検査でわかるのは、どのタンパク質にアレルゲン反応があるかまでなので、どの食材でアレルギー反応を示すかは、「食物負荷試験」と呼ばれる検査を行っていく必要があります。
「食物負荷試験」は、「除去食試験」でアレルギーのでなかったフードに、アレルゲンと疑われる食材を足していき痒みが出るかを確かめる試験です。
ここで、反応が出た食材が晴れてアレルゲンと認められるのです。
犬の食物アレルギーの治療方法
アレルギーの治療は、痒みをコントロールすることが目的となります。
まず、痒みを止めるために、内服薬や塗り薬を投与します。痒みを止めてあげないと、引っ掻いたり噛んだりして、余計に症状を悪化させてしまうからです。
次に、食物アレルギーであれば、アレルゲンに触れないように、低アレルゲンの療法食を与えていきます。
アレルギー自体を治すことは困難なため、原因物質に接触しないようにすることが重要になるのです。
また、「アレルゲンコップ説」で説明した通り、アレルギー症状は、複数の要素が積み重なってあらわれます。
そのため、シャンプーなどのスキンケアや、生活環境の改善(空気清浄機やストレスのためない)なども、アレルギーを改善するためには大切です。
犬の食物アレルギーに関するQ&A
ここでは、犬の食物アレルギーに関するよくある質問に回答していきます。
Q1. アレルギーの予防はできないの?
アレルギーは、体質など遺伝性の要因も強いため予防は難しいです。
しかし、「アレルギーコップ説」でもあった通り、アレルギーは、どれか1つの要素で発症するわけではなく、「環境」や「体調」などいくつかの要素が積み重なって発症します。
そのため、日頃のスキンケアをきちんと行なったり、生活環境を改善するなど日頃のケアが大切です。
Q2. 食物アレルギーになりやすい犬種って?
食物アレルギーになりやすい犬種として、
・柴犬
・マルチーズ
・ブルドドッグ種
・テリア種
が多いといわれています。
また、アレルギーは生まれる気の体質が関係する場合が多いので、3歳以下での発症が多いようです。
Q3. 食物以外のアレルギーってあるの?
アレルギーは大きく分けて
・食物アレルギー
・ノミアレルギー
・環境アレルギー
の3つに分類されます。
「ノミアレルギー」は、ノミが吸血する際の唾液にアレルギー反応を示すもので、強い痒みが特徴です。
「環境アレルギー」は、アトピー性皮膚炎とも呼ばれ、ハウスダストや花粉、化学物質などの環境に起因する物質がアレルゲンとなり、アレルギー症状を発症します。
どちらも、アレルギー症状は、食物アレルギーと似ているため、異常が見られる場合は、動物病院に相談しましょう。
まとめ
食物アレルギーは完治が難しく、一生付き合っていかなくてはならない病気です。
さらに、わんちゃんは自分で治療もケアもできないため、飼い主さんがしっかりアレルギーについて理解して治療を続けてあげることが大切です。
また、アレルギーの原因から体質まで、わんちゃんがアレルギーを発症してしまう原因はさまざま。
そのため、飼い主さんがアレルギーについて理解した上で、獣医師さんに相談し、愛犬にぴったりの治療やケアを見つけてあげてくださいね。